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東京高等裁判所 昭和59年(く)242号 決定 1984年10月04日

少年 S・R(昭和四三・七・一一生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、申立人らが連名で提出した抗告申立書に記載されたとおりであるから、これを引用する(なお、Cは法定代理人又は附添人にあたらず、その抗告申立は不適法であるから、他の申立人に対する関係で以下の判断を示す)。

一  抗告趣意中重大な事実誤認の主張について

論旨は、要するに、少年がDと共に本件非行の主要部分を行つた旨の原決定の判断には重大な事実誤認があるというのである。

そこで、記録によつて検討すると、少年は、当初傍観していたものの、次第にDに加勢して被害少年の腰付近を足蹴にしたうえ、Dの膝蹴りによりふらふらとした被害者のあご付近を足蹴にしてアスフアルト舗装の道路に後頭部を強打させ、その衝撃により原決定の傷害を負わせて被害者を死亡させるに至らしめたものであるから、被害者に因縁をつけて自ら手拳や膝で顔面を殴打したDと共に、三名の中では主導的な役割を果したものというべきであつて、これと同旨の原決定の認定にはなんら事実の誤認はない。論旨は理由がない。

二  抗告趣意中処分の著しい不当の主張について

論旨は、要するに、原処分は、「目には目を」の応報的な処分であり、暴行の発端をつくつたEが少年院送致の処分を受けていないことと対比して片手落であり、著しく不当であるというのである。

そこで、記録によつて検討すると、本件は、共犯者Dが被害者に因縁をつけ、EとDに続いて少年も被害者に暴行を加え、少年が被害者を足蹴にした結果一五歳の少年であつた被害者を死亡させるに至らしめたものであつて、非行の結果、態様が重大、悪質であり、殊に少年が自らの暴行により被害者を死亡させたことを考えると、少年自身非行時一六歳一月であつたことを考慮しても、その危険性には軽視し得ないものがある。また、少年には、中学校在学中から不良グループの番長として粗暴な行動をするなどの問題行動が見られるほか、幼少時に実父と親和しないまま生育したため社会規範の取り入れに不十分で、自信の乏しさからくる欲求不満を集団場面での同調的な行動で充足させるという性格傾向があり、本件もその徴表と見ることができる。加えて、少年は、未だ自らの行為の重大性とその社会的意味や責任について十分に内省していると認められない。そうすると、この際は、少年を施設に収容したうえ、専門家による継続的日常的な教育を施し、少年の内省を深めさせるとともに、その責任の重大さに耐え得るだけの社会性を成熟させることが肝要というべきであり、原決定が短期課程の勧告を付して中等少年院送致としたのは相当である。なお、共犯者Eの本件非行への関与の程度などを考慮すると、同人が保護観察に付されていることとの対比において原決定の処分が著しく不当であるとも認められない。論旨は理由がない。

よつて、少年法三三条一項、少年審判規則五〇条により、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 香城敏麿 裁判官 安藤正博 長島孝太郎)

抗告申立書<省略>

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